背中
まずは解剖学を知ろう
背中は複数の筋肉で構成されており、主な筋肉は次の通り。
・僧帽筋
・広背筋
・大円筋
・脊柱起立筋
他にも細かいインナーマッスルはたくさんありますが、身体の見た目を変える上であまり重要性は高くないので、覚えなくて大丈夫です。
上の図を見てもらえると分かる通り、脇の下から骨盤に向けて走行している広背筋は、広い背中を作りだす筋肉です。
肩甲骨の間と首(肩こりの部分)に走行している僧帽筋は、ボコボコと立体感のある背中を作りだす筋肉になります。
上記の画像を見て、筋繊維の走行向きを覚えておくと、より正しい意識をイメージして動作できます。
筋トレは、筋肉をよく伸ばし、よく収縮させる、そして負荷を与えることで刺激となり、筋肥大が引き起こされます。
鍛えたい筋肉の解剖学を理解して、どうすれば筋肉が伸びて、どうすれば筋肉が収縮するのか学んでいきましょう!
MASAKI
背中への刺激を高めるテクニック
次に背中への刺激を高めるテクニックを網羅的に紹介していきます。
最初は意味が分からないかもしれませんし、全てのテクニックをいきなり取り入れるのは難しいはずなので、何度もこの記事を見返しながら1つずつトレーニングに取り入れてみてください。
①:頚反射
②:グリップ&握り方
③:握りの強弱
③:骨盤
①:頚反射
・顎を上げると肩が下がりやすくなる
頚反射は頭部がもたらす身体の反射特性です。
上記の特性がありますが、基本的には頚椎はニュートラル(通常状態)にして動作することをオススメします。
例えば、ラットプルダウンでしっかりと肩甲骨を下げて、広背筋下部まで刺激したい場合、顎を引くよりも軽く上げた方が動作を行いやすくなります。
しかし、顎を上げすぎると、腹圧が抜けてしまう(体幹部に力が入らなくなる)可能性があるのと、頚椎自体を痛める原因になるので、本当に少しだけ顎を上げるだけで十分です。
同じく、デットリフトやバーベルロウイング、ダンベルロウイングなど、体幹にしっかり力を入れてフォームを維持する必要がある種目は
顎を上げずに軽く引いた状態が適しています。
ただし、顎を引きすぎると上背部が丸まり肩が上がって僧帽筋ばかりに効いてしまうので、ここでも本当に少しだけ顎を引く意識が大切です。
②:グリップ&握り方
・手のひらで包み込むように握る
次にグリップは基本的にはサムアラウンドといって、親指までしっかり巻いて握ります。
「ラットプルダウンやチンニング(懸垂)などの種目では、親指を外したサムレスグリップが良いんじゃないの?」と思うかもしれません。
しかし、これらの種目でもサムアラウンドを推奨します。
理由は次の通りです。
・サムレスグリップだと手首が反る原因になるから
・手首が反ると背中ではなく腕始動で動作しがちだから
・手首が反ると親指人差し指側に力が入りやすくなるから
実際に試してもらえるとすぐに分かりますが、サムレスグリップだと手首を反る動きがしやすくなります。
サムアラウンドで親指をグッと巻いて握ると、手首がまっすぐ固まって反る動きがしづらくなるのを実感できるはずです。
次に、手首が反ると背中の筋肉ではなく、腕の筋肉で動作してしまいがちです。
特にラットプルダウンでサムレスグリップで握ると、肩甲骨ではなく腕が先に動いてしまい、結果的に脇を閉じるような動きで、広背筋ではなく大円筋ばかりに効いてしまいます。
また、腕ではなく背中に効かせるために、小指薬指を強く握ると良いとよく言われていますが、これは本当にその通りです。
しかし、サムレスグリップだと、身体の仕組み上、親指人差し指側に力が入りやすくなってしまいます。
実際にサムアラウンドで、手の甲側が真っ直ぐになるようにすると、小指薬指側に力が入りやすくなるのが実感できるはずです。
少し難しい話ですが、サムアラウンドで手首が反らないように、手のひら全体で包み込むように握ってみてください!
③:握りの強弱
次に握りの強弱によっても、効きが変わってきます。
・ストレッチ時は握りを少し緩める
収縮時にグリップを強く握ることで、背中を強く収縮できます。
ラットプルダウンやチンニングなどで試してみてください。
次に、ストレッチ時は握りを少し緩めます。
グリップを緩めて、ウエイトによって自然に背中の筋肉が伸ばされるイメージで動作すると、強いストレッチ感が得られます。
これも実際に試してもらえるとすぐに分かります。
何かに強く捕まって背中をストレッチした場合と、強く握らずに指先を引っ掛けるようにしてストレッチした場合では、かなり感覚が違うはずです。
試してみてください。
④:骨盤
骨盤の状態によっても背中への刺激が変わります。
基本的には骨盤を立ててニュートラル(自然な状態)でトレーニングを行います。
例えば、ラットプルダウンで骨盤が後傾(腰が丸まってお尻が落ちた状態)していると、広背筋下部まで収縮させづらくなります。
反対に腰を反るように前傾しすぎていると、腰椎を圧迫して腰を痛める可能性があります。
常に骨盤をニュートラルにしておくことで、背中の筋肉を動かしやすくなります。
この骨盤のコントロールは、デットリフトやバーベルロウイング、ダンベルロウイングなど体幹の安定性が必要な種目で重要になるので、覚えておきましょう。
広背筋&大円筋&僧帽筋中部下部
ラットプルダウン
①:膝の角度は90°
②:骨盤を立てて座る
③:サムアラウンドで握る
④:上体を軽く後ろに倒す
⑤:腕を少し外旋させて肩を落とす
⑥:肩が上がらないように引く
追加のテクニックは次の通り。
②:グリップ=サムアラウンドorサムレス
③:握りの強弱=収縮時に強く握り、ストレッチ時に緩める
④:骨盤=ニュートラル
頚反射については過度に意識せずに、ニュートラル状態で動作します。
グリップは狙いたい部位に合わせて変えます。
広背筋下部まで刺激したい場合は、肩甲骨を下げて引く必要があるため、サムアラウンドで手のひら全体でバーを包み込むように握ります。
反対に大円筋や広背筋上部を狙いたい場合は、サムレスグリップで脇を閉じるように動作します。
また、握り方に関わらず、収縮時に強く握って、ストレッチ時に緩めるようにしてください。
チンニング
①:肩幅の1.5倍の手幅
②:目線を上げて上体を軽く反る
③:胸を近づけるように引く
④:サムアラウンドで小指薬指側を握る
追加のテクニックは次の通り。
②:グリップ=サムアラウンド
③:握りの強弱=収縮時に強く握り、ストレッチ時に緩める
④:骨盤=ニュートラル(足を後ろで組み・お尻に力を入れる)
基礎筋力は必要になりますが、チンニングは非常にオススメできる種目です。
ラットプルダウンよりも強い収縮刺激を与えることができ、背中全体の発達に貢献します。
目線を軽く上げたら、上体を軽く反るようにして、バーを胸に当てるように引っ張ります。
また、広背筋の働きをよくするために、足を後ろに組んで、お尻に力を入れた状態で行います。
お尻に力を入れると、解剖学的特性から広背筋に力が入りやすくなります。試してみてください。
ロープーリー
①:骨盤を立てて座る
②:手のひら全体でグリップを握る
③:骨盤を立てたまま上体を起こす
④:90°より鋭角にならないように引く
追加のテクニックは次の通り。
②:グリップ=サムアラウンド
③:握りの強弱=収縮時に強く握り、ストレッチ時に緩める
④:骨盤=ニュートラル
ロープーリーはバーベルロウイングを行うようなイメージで動作します。
ボートを漕ぐように骨盤を立てたまま上体を前後させて、おへそ付近に引きます。
ラットプルダウンと同じように、収縮時に強く握り、ストレッチ時に緩めるようにします。
このようにラットバーを取り付けてワイドグリップで行う方法もあります。
この場合は引く位置が若干高くなり、大円筋や僧帽筋に効かせられるようになります。
どちらも効果的な種目なので、試してみてください。
ロウイングマシン
①:膝の角度が90°になるようにシートを設定する
②:引いた際に肘の角度が90°より鋭角にならないようにする
③:骨盤を立てて胸を前に突き出すように引く
④:先に肩甲骨を寄せてから肘を引くと僧帽筋を刺激しやすい
追加のテクニックは次の通り。
②:グリップ=サムアラウンド
③:握りの強弱=収縮時に強く握り、ストレッチ時に緩める
④:股関節=ニュートラル
胸の前にパットがついているマシンロウイングは、僧帽筋中部や僧帽筋下部を刺激しやすい種目です。
上体が固定できることにより、肩甲骨の動きを行いやすくなります。
肘を後ろに引くというイメージではなく、胸でパットを押しながら肘を引くイメージで行うと僧帽筋に効かせやすいです。
パットから身体を離してしまうと、このマシンの利点を活かせないので、つけたまま動作しましょう。
このようにオーバーグリップで握ることで、より上背部をターゲットにすることもできます。
バーベルロウイング
①:足幅を閉じる
②:お尻を引いて上半身を前傾させる
③:上腕を外旋させる
④:おへそにバーが当たるまで引く
追加のテクニックは次の通り。
②:グリップ=サムアラウンド
③:握りの強弱=強く握るが親指人差し指は若干緩める
④:骨盤=ニュートラル
軽く顎を引いて腹圧が入る状態で、サムアラウンドで握り、おへそに当たるまで引きます。
広背筋に効かせるためには、若干脇を閉じて上体を軽く起こしながら引くのがポイントです。
上体を床と並行まで倒すよりも、自然に広背筋に力が入るように上体を起こしましょう。
また、グリップは強く握るが、親指と人差し指は若干緩めて、小指薬指側を強く握って引くと、広背筋を使う感覚が分かりやすいです。
ダンベルロウイング
①:両足をそろえて立つ
②:腰を丸めない
③:少し肘を曲げて広背筋に負荷をのせる
④:腰に向けて持ち上げる
追加のテクニックは次の通り。
②:グリップ=サムアラウンド
③:握りの強弱=収縮時に強く握り、ストレッチ時に緩める
④:骨盤=ニュートラル
ダンベルロウイングはバーベルロウイングと比べて、広い可動域をとることができる種目です。
なので、可動域が狭くなりすぎないように行いたいです。
収縮時に強く握って、ストレッチ時に緩めることで、より強い収縮感とストレッチ感を得られます。
非常に難しい種目ではありますが、何度も反復練習することで、段々と効かせる感覚が分かってくるので、諦めずに挑戦してみてください。
プルオーバー
①:ベンチにクロスするように仰向けになる
②:ダンベルを両手で持ち頭上に上げる
③:骨盤を下げ大胸筋と広背筋をストレッチさせる
④:胸の真上まで持ち上げる
追加のテクニックは次の通り。
②:グリップ=サムアラウンド
③:骨盤=ニュートラル
プルオーバーは広背筋や大円筋に強いストレッチ刺激を与えられる種目です。他にも大胸筋や上腕三頭筋にとっても良い種目なので、フォームは難しいですが練習してぜひともやっていただきたいです。
ダンベルを両手で持ったら、肘を軽く曲げつつ、頭上に大きくダンベルを下ろしていきます。
上腕が耳の横に来るまでゆっくりコントロールして下げ、ストレッチさせてください。
ケーブルにロープを取り付けて広背筋の収縮目的でプルオーバーを行う方法もあります。
動画のように行った場合は、広背筋のストレッチは狙えないので、収縮目的になります。
僧帽筋上部
シュラッグ
①:両足をそろえて立つ
②:肩を耳に近づけるように持ち上げる
③:肩を前後に回す必要はない
追加のテクニックは次の通り。
②:グリップ=サムアラウンド
僧帽筋上部を鍛えるのに、難しいテクニックは一切ありません。
ただダンベルやバーベルを持ち、耳に近づけるように肩を上げるだけです。
ただし高重量すぎて全く持ち上がっていなかったり、反対に軽すぎて余裕があるのはよくありません。
脊柱起立筋
デットリフト
①:足幅を閉じる
②:お尻を落として背中を真っ直ぐにする
③:顎を上げすぎない
④:体に沿うように持ち上げる
追加のテクニックは次の通り。
②:グリップ=サムアラウンド
③:握りの強弱=強く握る=(パワーグリップよりもリストストラップ推奨)
④:骨盤=ニュートラル
デットリフトは脊柱起立筋だけでなく、僧帽筋や広背筋にも強い刺激を与えられる良い種目です。
怪我のリスクがあるから、あまり行わない方が良いと言われていることもありますが、
怪我のリスクはデットリフトに限らず、全ての種目にあります。
正しいフォームで動作すれば、怪我する可能性があるリスクよりも、得られるメリットの方が大きいので、ぜひ挑戦してください。
バックエクステンション
①:足幅を肩幅にする
②:脊柱起立筋を上部から順番に丸めていく
③:反対に上部から順番に伸ばしていく
④:丁寧に動作を繰り返す
脊柱起立筋を鍛えるバックエクステンションは、背中を真っ直ぐに固定して股関節の動きで持ち上げるのではなく、あえて動画のように脊柱を丸めて動作します。
胸椎から腰椎と順番に丸めていき、同じように胸椎から腰椎と順番に持ち上げていきます。
とにかくゆっくり丁寧に脊柱起立筋の収縮感を感じながら動作してください。
メニュー例
背中の基本的なメニュー例は次のような感じです。
1:デットリフト=6〜8回✖️3set
2:バーベルロウイング=8〜10回✖️3set
3:ラットプルダウン=8〜10回✖️3set
4:マシンロウイング=12〜15回✖️3set
先にデットリフトを行うと、腰が張ってしまって、その後のラットプルダウンがやりづらくなるという方は、先にプル系の種目を行う方法もあります。
1:ラットプルダウン=8〜10回✖️3set
2:ナローグリップラットプル=8〜10回✖️3set
3:ダンベルロウイング=8〜10回✖️3set
4:デットリフト=6〜8回✖️3set
これはあくまで一例です。
基本的にはミッドレンジ→ストレッチ→収縮の順番で種目を選択して頂ければ問題ありません。