胸
まずは解剖学から
大胸筋はこのように、胸の中央から上腕骨にまとまって付着しています。
大胸筋の作用は次の通り。
・肩関節の水平内転
・肩関節の屈曲
・肩関節の内転
・肩関節の内旋
なんのこっちゃ分からなくても大丈夫です。
この中でも最も大胸筋を強く作用させる動きは、肩関節の水平内転、つまり、ベンチプレスやチェストプレスマシンのように、横に広げた腕を前に動かす動作です。
筋トレは、筋肉をよく伸ばし、よく収縮させる、そして負荷を与えることで刺激となり、筋肥大が引き起こされます。
MASAKI
解剖学をザックリでも理解しておくことで「こう動かせば、この筋肉が動くな」とイメージできるようになります。
大胸筋への刺激を高めるテクニック
次に大胸筋への刺激を高めるテクニックを網羅的に紹介していきます。
最初は意味が分からないかもしれませんし、全てのテクニックをいきなり取り入れるのは難しいはずなので、何度もこの記事を見返しながら1つずつトレーニングに取り入れてみてください。
①:頚反射
②:グリップ
③:握りの強弱
③:股関節
①:頚反射
頚反射は頭部がもたらす身体の反射特性です。
胸を鍛える場合は、顎を引くことで大胸筋の収縮感が強くなります。
反対に顎を上げればストレッチ感が強くなるのかというと、そんなことはなく、腹圧が抜ける(体幹が安定しなくなる)デメリットがあるので、基本的には顎は引いて動作することをオススメします。
②:グリップ
次にグリップは基本的にはサムアラウンドといって、親指までしっかり巻いて握ります。
一部サムレスグリップ(親指を外したグリップ)でも問題ない種目としては次の通り。
・インクラインベンチプレス
・スミスインクラインベンチプレス
・スミスベンチプレス
理由としては、サムレスグリップにすると、脇を閉じた動きを行いやすく、大胸筋上部の筋繊維走行に合わせて鍛えられるからです。
インクライン系の種目かつ、バランスを取れて安全性の高い種目でサムレスグリップを採用すると良いでしょう。
しかし、基本はサムアラウンドです。
③:握りの強弱
次に握りの強弱によっても、効きが変わってきます。
・ストレッチ時は握りを少し緩める
神経支配の関係から、収縮時に親指人差し指を強く握ることで、大胸筋を強く収縮できます。
試しに胸の前に腕を伸ばして行ってみてください。
反対に小指薬指側を強く握ると、胸ではなく上腕三頭筋が使われやすくなってしまいます。
次に、ストレッチ時は握りを少し緩めます。
ガチッと強く握ってしまうと、肘周りや肩周りを固めてしまい、大胸筋に負荷をのせながらストレッチさせずらくなるからです。
グリップを緩めると、肘と肩をスムーズに動かすことができます。
これも実際に試してもらえるとすぐに分かります。
何かに強く捕まって大胸筋をストレッチした場合と、強く握らずにストレッチした場合では、かなり感覚が違うはずです。
試してみてください。
④:股関節
股関節の状態によっても胸への刺激が変わります。
・股関節伸展=ストレッチ
まず、股関節屈曲とは、簡単に言うと座ったり、ベンチ台に足を上げている状態です。
股関節が屈曲していると、伸展している時と比べて大胸筋が収縮しやすくなります。
反対に股関節が伸展、立っている状態や、ベンチプレスで床に足を下ろしている状態では、屈曲している時と比べて大胸筋がストレッチしやすくなります。
上部
インクラインベンチプレス
①:胸を張り胸を上に突き出す
②:体のアーチを作る
③:手首を軽く立たせる
④:上腕を外旋させる
追加のテクニックは次の通り。
②:グリップ=サムアラウンドorサムレス
③:握りの強弱=強く握りすぎない
④:股関節=屈曲
インクラインベンチプレスも、通常のベンチプレスと同じように軽く顎を引き、強く握りすぎないように動作します。
異なる部分とすればサムレスグリップで動作しても、効かせやすいということです。
丁寧に鎖骨のすぐ下におろし、大胸筋上部のストレッチを感じたら、アーチを崩さないようにコントロールして持ち上げましょう。
インクラインダンベルプレス
①:胸を張ってアーチを作る
②:足を閉じる
③:ダンベルは常に肘の真上
④:トップでダンベルは寄せない
追加のテクニックは次の通り。
②:グリップ=サムアラウンド
③:握りの強弱=強く握りすぎない
④:股関節=屈曲
インクラインダンベルプレスは、左右自由にダンベルを動かすことができるので、若干脇を閉めて、大胸筋上部の筋繊維走行に合わせて効かせられます。
インクラインベンチプレスが苦手な人は、重量を落としてでもダンベルで動作することで効かせられる可能性が高いです。
インクラインダンベルフライ
①:オンザニーで始める
②:胸を張ってアーチを作る
③:ダンベルをハの字にする
④:肘を曲げてダンベルを下げる
⑤:トップでダンベルを合わせない
追加のテクニックは次の通り。
②:グリップ=サムアラウンド
③:握りの強弱=下ろす際にグリップを緩める
④:股関節=屈曲
インクラインダンベルフライは、インクラインダンベルプレスよりも若干シートの角度を高くしても効かせることができます。
完全に手のひらを向い合わせにするよりも、ダンベルをハの字で持ち、大胸筋上部をストレッチする軌道で下ろしていきます。
下ろす際にグリップを緩めることで、よりストレッチ感を強くできます。
ケーブルフライ(やや下から)
①:胸よりやや低い位置に設定する
②:斜め下から大胸筋上部の筋繊維に合わせて持ち上げる
③:収縮時には肘をしっかり寄せる
④:力を抜かずに下ろす
追加のテクニックは次の通り。
②:グリップ=サムアラウンド
③:握りの強弱=下ろす際にグリップを緩める
④:股関節=伸展
大胸筋上部は肩関節の屈曲動作と水平内転を組み合わせて鍛えますが、あくまでも強い力を発揮できるのは水平内転だということは忘れないでください。
よくほぼ真下から上に持ち上げて大胸筋上部を狙う方もいますが、これでは三角筋前部の働きがメインとなってしまいます(やり方次第ですが)
なので、インクラインダンベルプレスを行う時と同じ上腕の軌道で行うだけで十分上部は鍛えられます。
大胸筋中部
ベンチプレス
①:胸を張り肩甲骨を寄せる
②:体のアーチを作る
③:胸の最も高い位置に下ろす
④:バーは必ず胸まで下ろす
追加のテクニックは次の通り。
②:グリップ=サムアラウンド
③:握りの強弱=強く握りすぎない
④:股関節=基本は伸展(足を下ろす)
ベンチプレスは高重量を扱って、大胸筋の筋力を高められる種目です。
顎は軽く引きますが、頭はベンチにしっかりつけて、グリップはサムアラウンド、握りの強弱はそれほど意識しなくても大丈夫です(できれば強く握りすぎない方がいい)
そして、足は下ろして、動作中しっかりとアーチを維持できる体勢を作りましょう。
ダンベルベンチプレス
①:オンザニーで始める
②:胸を張ってアーチを作る
③:肘を軽く緩める
④:ダンベルは常に肘の真上
追加のテクニックは次の通り。
②:グリップ=サムアラウンド
③:握りの強弱=強く握りすぎず、収縮時に親指人差し指を強く握る
④:股関節=基本は伸展(足を下ろす)
ダンベルベンチプレスは、肘の真上にダンベルを保持して動作し、収縮時に親指人差し指を強く握って収縮感を強くします。
ベンチプレスが苦手な人でも、ダンベルベンチプレスを丁寧に行えば効かせられる可能性があるので試してみてください。
ダンベルフライ
①:オンザニーで始める
②:胸を張ってアーチを作る
③:足をベンチ台に上げる
④:腕を内旋させる
⑤:肘を曲げて下げる
⑥:トップでダンベルを合わせない
追加のテクニックは次の通り。
②:グリップ=サムアラウンド
③:握りの強弱=下ろす際にグリップを緩める
④:股関節=屈曲
ストレッチで刺激を与えたい種目なので、ダンベルを下ろす際はグリップを緩めつつ、若干小指薬指を強く握って、胸を大きく開くように下げていきます。
また、ベンチに足を上げて股関節屈曲状態で動作することで、大胸筋を動かしやすくなります。
チェストプレス
①:グリップが胸の真横にくるようにシートを設定する
②:胸を張ってアーチを作る
③:マシンの軌道に合わせて力を入れる
追加のテクニックは次の通り。
②:グリップ=サムアラウンド
③:握りの強弱=下ろす際にグリップを緩める
④:股関節=屈曲
チェストプレスはマシンのメーカーによって若干動きが異なりますが、大切な部分は同じです。
シートの高さの設定を間違えないように注意して、肘とグリップが常に胸の真横にくるようにしてください。
内側に絞り込める軌道のマシンの場合は、グリップを若干狭くしても、上腕三頭筋に負荷が逃げずに収縮させられます。
ペックフライ
①:グリップが胸の高さになるようにシートを合わせる
②:肘のくぼみを内側に向ける
③:寄せた際に親指人差し指を強く握る
④:顎を引く
追加のテクニックは次の通り。
②:グリップ=サムアラウンド
③:握りの強弱=収縮時に親指人差し指を強く握る
④:股関節=屈曲(シートが高ければ、何か置いて足を上げて屈曲状態を作る)
ペックフライとケーブルクロスオーバーの違いとしては、背もたれがあるかないかです。
背もたれがあるペックフライは、上体を安定させやすく、より収縮感を高められます。
グリップを握ったら、肘のくぼみを内側に向けて動作します。
収縮時に1〜2秒キープし、親指人差し指を強く握ると、より大胸筋を強く収縮できます。
また、ストレッチが目的の種目ではないので、肩甲骨が寄るほど深く戻す必要はありません。
ケーブルクロスオーバー
①:両足を揃えるorわずかに前後させる
②:上体の角度を変える
③:前腕とケーブルの向きを揃える
④:肘をしっかり寄せる
追加のテクニックは次の通り。
②:グリップ=サムアラウンド
③:握りの強弱=収縮時に親指人差し指を強く握る
④:股関節=基本は屈曲
収縮時に刺激を与えたい種目なので、顎を引き、収縮時に親指人差し指を強く握り動作します。
また、上体を立てて動作するよりも、股関節を屈曲させて、上体を前傾させた方が身体も安定し、高重量を扱うことができます。
大胸筋下部
デクラインベンチプレス
①:通常のベンチプレスよりも手幅をやや広げる
②:脇を広げてみぞおちの下に下ろす
③:脇を閉じるように上げる
追加のテクニックは次の通り。
②:グリップ=サムアラウンド
③:握りの強弱=下ろす際にグリップを緩める
④:股関節=伸展
動画ではセーフティーがありませんが、危険なので必ず設定してください。
大胸筋下部の筋肥大にデクラインベンチプレスは最適です。高重量を扱って下部の筋繊維に沿って動作を行えます。
若干慣れが必要な種目なので、まずは余裕のある重量から練習して徐々に増やしていきましょう。
ケーブルフライ(やや上から)
①:ケーブルを高い位置に設定する
②:ケーブルから離れすぎずに上体を立てて動作する
③:脇を広げて下部の筋繊維に合わせて脇を閉じる
④:力を抜かずにコントロールして下ろす
追加のテクニックは次の通り。
②:グリップ=サムアラウンド
③:握りの強弱=下ろす際にグリップを緩める
④:股関節=やや屈曲
通常のケーブルクロスオーバーよりも上体を立たせて、下部の筋繊維の走行に合わせて動作していきます。
重量が重すぎて前傾してしまうと、下部ではなく中部への刺激が強くなってしまうので、上体を立てて維持できる重量で行うことが大切です。
ディップス
①:サムアラウンドで握る
②:肩を下げ肩甲骨を寄せすぎない
③:脇を広げて下部繊維をストレッチさせる
④:肩に負担がかからない範囲で動作する
追加のテクニックは次の通り。
②:グリップ=サムアラウンド
③:握りの強弱=下ろす際にグリップを緩める
④:股関節=屈曲
ディップスで大胸筋下部を鍛えるのは非常に難しいですが、効かせられるようになれば、とても良い種目なので解説していきます。
自重で動作が難しい場合は、アシストのあるマシンを使用して行っても構いません。
股関節を屈曲して上体を軽く前傾したら、肩を下げて大胸筋下部に力を入れます。上体が立ち、脇を閉じすぎると上腕三頭筋や三角筋前部への刺激が強くなってしまうので、脇はやや開いて大胸筋下部の筋繊維に合わせて動作します。
また、肩に負担が強い種目なのと、それほど深く下げなくても大胸筋下部のストレッチは十分行えるので、負担がかかりすぎない範囲で動作してください。
メニュー例
大胸筋の基本的なメニュー例は次のような感じです。
1:ベンチプレス(ミッドレンジ)=6〜8回✖️3set
2:インクラインベンチプレス(ミッドレンジ)=6〜8回✖️3set
3:ダンベルフライ(ストレッチ)=8〜10回✖️3set
4:ペックフライ(収縮)=12〜15回✖️3set
これはあくまで一例です。
基本的にはミッドレンジ→ストレッチ→収縮の順番で種目を選択して頂ければ問題ありません。